“ウズマキマズウ”や“シンシュンのミ”といったバンド、渋谷 毅とのデュオなど多彩な活動を展開している
小川美潮の、ウズマキマズウと並ぶ回文バンド“スプラゥトゥラプス”のアルバムです。メンバーは小川の他に
吉森信(key), 大川俊司（b, g.), 小林武文(ds), whacho（
perc）といった面々。器楽的な楽曲をやる、というのがおおよそのコンセプトとのことですが、
小川美潮の声の力によって、テクニカルなイメージよりも人懐こさと清々しさを感じさせるのはさすがです。チャクラやWha-ha-ha の頃のようなエキセントリックさは多少息をひそめていますが、朗々と歌い上げるときの開放感、
スキャットの愛くるしさ、名盤『４to３』などで見せた親しみやすさは健在。そして、今の彼女ならではの円熟の境地もここにはあります。かつて
ビョークのことを「歌う生きもの」と評した文章をどこかで目にしたことがありますが、日本でその呼称にふさわしいのは
小川美潮ではないでしょうか。彼女の歌を聴いていると、天女や少女だけではなく、小鳥や栗鼠、あるいは楽園の花々や実り豊かな大地が直接歌っているかのような思いにとらわれることがしばしばあるのです。
