ペンギン・カフェ・オーケストラ『ブロードキャスティング・フロム・ホーム』

ブロードキャスティング・フロム・ホーム(紙ジャケット仕様)

ブロードキャスティング・フロム・ホーム(紙ジャケット仕様)

数年前に日本のミュージシャンによるトリビュート・アルバムも出たペンギン・カフェ・オーケストラ。80年代はお洒落な音楽としてスポットが当たっていましたが、今の若い音楽ファンにも聴かれているのでしょうか。
『ブロードキャスティング・フロム・ホーム』は84年に発表された3rdアルバム。来日の際、京都の道端に捨てられていたハーモニウムを拾って、その数週間後に本作の冒頭に収められた「ミュージック・フォー・ア・ファウンドハーモニウム」を作曲したという有名なエピソードがあります。イーノが主宰したオブスキュア・レーベルからリリースされた1stや、日本で彼らの名を高からしめた2ndにあった実験性は表面的には影をひそめ独自のスタイルに昇華されたアルバムで、私は本作が彼らの代表作だと考えています。
CDショップに行くと彼らのアルバムはニュー・エイジのコーナーに置かれていることが多いのですが、個人的には彼らの音楽にニュー・エイジ的な要素はあまり感じません。ミニマルで、少しエスニックな要素があり、穏やかなユーモアを湛えた彼らの音楽は今ならポスト・エレクトロニカの先駆的な存在として捉えた方が面白い。80年代という時代に閉じ込めてしまうのは勿体ありません。未来に向けて開かれた音楽としてこれからも聴き続けられるべきだと思います。