5/3 Springfields'10 東京場所@日比谷野外大音楽堂

大阪、東京、福岡で開催される音楽フェスティバル、Springfileds'10の東京場所に行ってきました。会場の日比谷野外大音楽堂に行くのは昨年の山下洋輔トリオ復活祭以来です。幸い好天に恵まれ、適度な風も心地よく、ペットボトルのお茶を飲みながら始まるのを待っていました。
15時過ぎ、オープニング・アクトの青葉市子が静かにステージ上に現れ歌いだしました。ギターの弾き語りで数曲。端正なギターの演奏と伸びやかな歌声を聴かせてくれました。
さて、トップバッターは原田知世です。縞のシャツ、ふんわりした黒い短めのスカートに赤いタイツとハイヒールという衣装にまず目を惹かれました(^^;)。彼女のステージを見るのはこれで3度目ですが、見るたびに可愛くなっているような気がします。会場のあちこちから「可愛い・・・」「顔、ちっさ!」というつぶやきが広がっていく中、演奏スタート。ヴァイオリンを加えたバンド編成で、原田自らも時折ギターを弾いて歌いました。数曲演奏したところで突然「では、スペシャル・ゲストを紹介します」とアナウンス。登場したのはなんと本日のトリ、細野晴臣でした。始まって早々のサプライズに会場はどよめきます。そして歌いだしたのが名盤『はらいそ』に収録された「ファム・ファタール」なのですから驚きの自乗です。この曲をライヴで演奏することは始めてとのことですが、細野の声の調子もよく、原田と和やかなデュオを聴かせてくれました。細野退場後、再びギターを持って最後の曲を歌った原田。演奏の締めのところでギターを持ち上げ、ジャン!と振り下ろしたのですが、それが一拍早く、「やらかしちゃいました・・・」と照れ笑いを浮かべながら退場する姿もまた愛らしかったです。
次に登場したのはキセル。リラックスした様子で、穏やかなメロディーをもった曲を歌っていきました。メロディーだけだとやや平坦に思えるところもあったのですが、サウンドにモンドな味つけを施したエマーソン北村のキーボードや、意外に凝ったビートが曲に起伏をつけていきます。ミュージック・ソウを用いた曲もあって、一見普通のフォーク・ユニットに見えるけど、それだけに留まらない懐の深さを見せてくれました。
三番手はもうすぐソロ・アルバムをリリースする、SAKE ROCKのリーダー、星野源のソロ・ステージ。「大阪のときは細野さんが前座だったので、めちゃくちゃ緊張して、東京は違うから大丈夫かと思ったけど、知世さんとキセルの後じゃ同じくらい緊張します」と言いながらも、客席からとびかう「源ちゃーん」の呼びかけにも気さくに答え、飾らない人柄を感じさせました。曲や歌声も温かみがあり、私も含め始めて彼の音楽に接した人も好感をもてたのではないでしょうか。会場との親密度という点では一番でした。
日もすっかり傾き暮れなずむ会場。いよいよ大貫妙子が登場です。黒で統一したシックな装いでマイクの前に立ったター坊。流れ出したイントロは名曲「色彩都市」。個人的にも大好きな曲です。私の前に座っていた女性二人も互いの肩を叩いて大喜びでした。いつもながらの魅力的な歌声もさることながら、森俊之(Key)鈴木正人(B)沼澤尚(Dr)小倉博和(G)によるバンドの演奏がうまい!特に小倉のまろやかな音色のギターの心地よさといったら・・・。そんな素晴らしいバッキングで「突然の贈りもの」「Mon deux Soleil」やシュガー・ベイブ時代のナンバー「いつも通り」といった名曲が次々と歌われるのですからたまりません。最後は「さっき知世さんも歌ったけど・・・」といいながらまさかの「ファム・ファタール」をカヴァー。リズム・アレンジに工夫をこらし、一味違った演奏で楽しませてくれました。この日のベスト・ステージでしたね。
さあ、トリはみんな待ってた細野晴臣です。コシミハル(Key)、伊賀航(B)、高田漣(Pedal Steel, etc.)、伊藤大地(Dr)を従え、まずは「smile」のカヴァーを披露。そして2曲目から鈴木茂が参加!久々に生で聴いた鈴木茂のギターは、昔と変らないつややかな音色と切れ味があり、元気な姿に胸が熱くなりました。曲目の方はといえば「アッコちゃんは誰の曲を歌ってもオリジナルのように聴かせるんだけど、ぼくはオリジナルをやってもカヴァーのようになっちゃうんです。」と言いながら、カントリー、ブルース、ブギといったアメリカン・ルーツ・ミュージックのカヴァーを次々と演奏していきました。「ぼくは北米音楽の伝道師ですから」とも話しておりました。ほとんどの曲に鈴木のギター・ソロをフィーチュアしていたのも嬉しかったですね。途中、ジム・オルークのアルバムでも歌っていたバカラック・ナンバー「遥かなる影」を、最後にようやくオリジナル曲「ボディ・スナッチャーズ」を演奏しましたが、それ以外は知らない曲ばかり。でも観客全員が楽しそうに歌っている細野の姿に見入っていました。自然体なのにとてもカッコイイんですよねえ。あんな風に年を重ねたいものです。
あっというまに時は過ぎアンコールへ。細野が「去年もやったけど、今年もやらないわけにはいかないよね」と語って、全員で忌野清志郎に捧げる「幸せハッピー」を歌い、楽しい音楽の時間は幕を閉じたのでありました。