ヌーンデイ・アンダーグラウンド『ザ・ケー・オー・コーラル』

ザ・ケーオー・コーラル

ザ・ケーオー・コーラル

ポール・ウェラーのプロデュースを手がけたことで名を馳せた、サイモン・ダインのプロジェクトの4作目。私はこれが初聴きです。“コーラル(合唱隊)”とタイトルに銘打っているだけあって、全編コーラス隊による歌声を聴かせているのですが、その合唱の音色のつくりこみが50年代〜60年代の録音のような響きに仕上げています。また、メロディー、アレンジはソフト・ロック的なのですが、楽曲の構造がライナーノーツでも触れられているように通常のポップスの型式ではないので、全てオリジナル楽曲にもかかわらず、過去のソフト・ロックやR&B、ジャズなどの音源のコラージュが延々続いているかのように聴こえるのですね。まるでソフト・ロックに目覚めたホルガー・シューカイが創ったアルバムみたい。トッド・ラングレン『魔法使いは真実のスター』の前半部も彷彿とさせます。断片のひとつひとつはとてもキャッチーなのに、全体を通して聴くと悪夢のように響く音楽。しかしこの悪夢にはこのうえなく甘美な味わいがあり、このまま醒めてしまいたくないと思わせる魔術的な魅力があるのです。