キング・クリムゾン『リザード』

リザード(紙ジャケット仕様)

リザード(紙ジャケット仕様)

長らくフリップ翁の中では黒歴史扱いされていたアルバム(40周年記念エディションの5.1サラウンド・ヴァージョンを聴いて再評価したらしい)。イエスのジョン・アンダーソンがゲストで参加するなど、グループが混乱していた時期に制作されたため、当時は色々と意に沿わないところもあったのでしょう。しかし、キース・ティペット一派のバックアップにより、フリー・ジャズ度が増したこのアルバムには、この時期にしかない特異な魅力があるのも確かなのです。グレッグ・レイクジョン・ウェットンといった強力なリード・ヴォーカルの狭間に埋もれてしまった感もあるゴードン・ハスケルのスモーキーな声も私は好き。前半のどこかオリエンタルな奇妙な楽曲は今聴くとかなり新鮮に響くし、キース・ティペット一派が大活躍する後半の組曲を聴くと、この路線をもう少しやって欲しかったという気になります。そして、前半と後半をつなぐ繊細な「水の精」がリリカル・クリムゾンの隠れた名曲。このアルバムと次作『アイランド』にはクリムゾンのもうひとつの“可能性の中心”があるように思えてなりません。クリムゾンを聴いたことがないジャズ・ファンに聴かせて感想を聞いてみたいです。