生前の武満と親交が深かった
小室等による、タケミツ・ソング集。武満が残した「うた」のアルバムは今もコンスタントにリリースされていますが、その多くがクラシック畑の歌手によるもの。もちろん、それぞれに独自の解釈が施され、丁寧に制作された優れたアルバムがほとんどですが、クラシック的な「歌曲」ではなく、ジャズや
シャンソンの要素が濃い武満の「うた」にとっては、クラシック系の歌唱はやや大仰に聴こえてしまいがちなのが難しいところ。その点、このアルバムは小室の歌唱も簡素なバンド・
サウンドによるアレンジもごく自然体で、曲のもつポップス的な要素を無理なく表現していて好感が持てます。小室自身による曲へのコメントも、いくつかの曲に
ブルーノートが使用されていることにさりげなく言及するなど、クラシック系の解説ではまずお目にかかれない指摘があるのがうれしい。
石川セリのアルバムと並ぶ、ポップス界からの武満に対する優れたオマージュ。