渋谷慶一郎『for maria』

ATAK015フォー・マリア

ATAK015フォー・マリア

坂本龍一のピアノ・ソロ・ライヴ盤と一緒にこのアルバムを買いました。坂本のアルバムは悪くはないし、親しみのある曲が多く収録されているのに、なぜか途中で飽きてしまうのですが、こちらのアルバムは何度聴いても不思議に飽きることがありません。おそらくピアノの音色の微妙なニュアンス、陰影などがこのアルバムの方により多く含まれているからでしょう。ここでのピアノの音色は不思議な生々しさをもって聴く者に迫ってきます。渋谷による曲の良さもさることながら、エンジニアのセイゲン・オノの貢献も見逃せないところ。“高度な技巧や複雑な和声を用いているから優れているのだ”とか、“新しいことをやっているから凄いのだ”といった地点から遠く離れた場所で“音楽”の在り様を静かに問いかけてくるようなアルバム。