Prefab Sprout『Let's Change the World With Music』

Let's Change the World With Music

Let's Change the World With Music

今日は豪華2本立てです(^^;)。
『マナフォン』を聴いたときは驚きました。前作『ブレミッシュ』で到達した地点から更に歩みを進めた、前人未到といってもいいヴォーカルとサウンドの関係がそこに築かれていたからです。『ブレミッシュ』でのデレク・ベイリーが奏でる無調のギターとの共演を耳にしたときは、これはもう行き着くところまで行ったのではないかと思ったものですが、まさかその先があるとは・・・。一見前作程過激には聴こえないのですが、大友良英ターンテーブルや、エヴァン・パーカーのサックスなどが音の微粒子となってシルヴィアンのヴォーカルと不即不離のタペストリーを織り成していく様が圧巻。それでいて全体のトーンは穏やかで、ジャケットからの印象もあるのですが、ブリティッシュ・フォーク的な世界に大きく踏み出したようにも聴こえる懐が深い音楽です。
一方『Let's Change the World With Music』を最初に聴いたときも驚きました。ただしこれは悪い意味で(^^;)。何しろいきなりチープな打ち込みドラムの音にプリファブらしからぬラップが耳に飛び込んできたのです。8年の歳月をかけて制作した結果がこれか!?その前にシルヴィアンを聴いて感銘を受けていただけに、よけいにその落差の大きさに愕然としたのです。・・・ところが、更なる驚きがこの後待ち構えていました。サウンドのクオリティでは比較にならないこのアルバムが、全部聴き終えたときには『マナフォン』に勝るとも劣らない感動を与えてくれたのです。とにかく曲の出来が異常なくらい良くて、それが内にパトスを秘めたパディ・マクアルーンの声で歌われるのを聴いているうちに、頭の中でどんどん理想のサウンドが構築されてしまうんですよ。「Let There Be Music」「I Love Music」「Sweet Gospel Music」「Meet The New Mozart」「Angel Of Love」といった、見ただけでは直球すぎてたじろいでしまうような曲名が聴き終えた瞬間から深い説得力をもって訴えてくるのです。
『マナフォン』と『Let's Change the World With Music』。ひとつ共通しているのはヴォーカルが中心となって強い磁場を形成しているところです。どちらも最後に印象に残るのは「うた」の力。あまりにも対照的なサウンドをもつ2作品ですが、全く異なったやりかたで、私に「うた」の素晴らしさを改めて教えてくれた音楽になりました。