ザ・ビートルズ『リボルバー』

リボルバー

リボルバー

ジャケットとあいまって、ビートルズのアルバムでは珍しくダークな質感を感じさせる作品ですが、いうまでもなく、スタジオを楽器としてフルに活用することを学んで成果をあげた傑作です。ジョージの曲が3曲収録されているのも見逃せないところで、彼の持ち込んだインド音楽の要素がもっともグループ全体に影響を与えたアルバムと思います。ジョンは自分の声をどんどん加工したり、サイケデリックの色が濃い曲を提供したりとアルバムの先鋭的な面を象徴しているといえるでしょう。しかし、このアルバムはポールの才能がついに全面的に開花したアルバムとして私には忘れがたいものとなっています。ここでのポールの曲は癖の強いジョージ、ジョンの曲にポップさで全面対抗して一歩も負けていません。自分の曲のみならず、他のメンバーの曲への貢献も大きく、ジョージ曲「タックスマン」でのラーガ的なギター・ソロ、ジョンの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」でのテープループ導入など八面六臂の大活躍。先にジョンの曲が“先鋭的な面を象徴している”と書きましたが、実際にグループに現代音楽の手法を持ち込んだのはポールで、実は一見一番保守的な印象の彼が意外や最もアヴァンギャルドな存在だったのですね。そしてブライアン・ウィルソンの影響でベース・スタイルも変化。これでもかというぐらいメロディックなフレーズを繰り出すその演奏は中期〜後期ビートルズサウンドの大きな柱となりました。
・・・と、ここまでポールを中心に書いてきましたが、アルバムを聴いていてポールひとりががんばっているという印象はありません。メンバーそれぞれがグループに新しい要素を持ち込み、互いに刺激を受けて前進していく様子が聴いているとありありと浮かんでくるのです。初期とは異なる形でバンドの一体感が伝わってきて、そのことがアルバムから「あれこれやってみました」的な寄せ集め感を払拭しているのですね。実験的であることとポップであることが両立可能であることを示した超重要作(もっともビートルズに重要作でないアルバムってあるの?という気もしますが(^^;))。