サイモン&ガーファンクル『LIVE 1969』

Live 1969

Live 1969

来週来日するサイモン&ガーファンクルですが、あまり盛り上がってないように思えるのは気のせいでしょうか?もちろん昔からのファンにとってはうれしいことでしょうが、どうもビートルズカーペンターズなどと比べて若い世代のファンが少ないように思えるのですね。杞憂ならばいいのですが、この見事なライヴ・アルバムがオールド・ファンのコレクターズ・アイテムとして捉えられるだけで終わってしまうのはあまりにも勿体ないと思うのです。
タイトル通り1969年のライヴを収録したアルバムで、発売直前だったスタジオ・アルバム『明日にかける橋』の収録曲が観客の前で初披露されたという意味でも重要ですが、そういった歴史的な意義を抜きにしても充分聴き応えのある作品となっています。『明日にかける橋』に参加した、ラリー・マクテル(ピアノ)、ハル・ブレイン(ドラムス)ジョー・オズボーン(ベース)といったミュージシャンにナッシュビルのギタリスト、フレッド・カーターJrをバックに従えているのですが、あくまで基本はポール・サイモンのギター1本と2人のハーモニーで勝負。確かにここで聴かれるポールのギターと2人のヴォーカルはそれだけで一つの世界を確立させていて、余計な音を入れる余地はありません。この後ほど無くして解散してしまう彼らですが、人間関係はともかく音楽的にはひとつのピークを迎えていたことがはっきりと一音一音から伝わってきます。
「早く家に帰りたい」や「スカボロー・フェア」「サウンド・オブ・サイレンス」といったヒット曲の数々はもちろん素晴らしいのですが、注目すべきは“新曲”として歌われた一連の楽曲でしょう。「ソング・フォー・ジ・アスキング」や「フランク・ロイドに捧げる歌」といったなかなか渋いところが選ばれているのもうれしいところですが、やはりハイライトは「明日にかける橋」。ラリー・マクテルのピアノをバックにアート・ガーファンクルが歌いだすのを音もたてずにじっと聴き入る観客。そして曲が終わるやいなや巻き起こる万雷の拍手・・・40年の時を越えて自分も歴史的瞬間に立ち会ったような気分にさせてくれる、ライヴ・アルバムならではのリアリティがこの1曲に凝縮しています。