4/24 スパークス“An Evening With SPARKS「Heavenly Creatures」”@渋谷O-EAST

スパークス

2006年の来日公演のときは「もう彼らを生で見られるのはこれで最後かも・・・」なんて思ったものですが、どうしてどうして。2008年にはフジロックに登場。ムーンライダーズ鈴木慶一をはじめとする多くの人にベストアクトと言わしめた快演を見せてくれた(私は見ることができなかったのですが・・・)スパークス。今年も来日してくれました。東京公演は23日、24日の2日間。いずれも前半は最新作『エキゾチック・クリーチャーズ・オブ・ザ・ディープ』を演奏し、23日は後半で名作『キモノ・マイ・ハウス』、そして私が行った24日はテクノ期の代表作『NO.1 in Heaven』を全曲演奏するという豪華なプログラムでした。できれば両方行きたかったのですが・・・。


まずは第1部。幕が上がるとステージ中央にはベッドらしきものが置いてあります。そこにショッピング・カートを押しながらクールな表情の眼鏡女子の一団が登場。なんだか変なパフォーマンスをしたかと思うと、勢いよくベッドから飛び起きてきたのはロン・メイル!いきなりの登場に早くも会場のテンションが上がります。そしてラッセル・メイルも現れ、第1部が始まりました。舞台中央にはスクリーン、その両脇にバンド・メンバーが並びます。全員が片仮名で「スパークス」と書かれたTシャツ(会場でも売ってました)を着込んでいるのがダサカッコイイ。ステージは2006年同様、エネルギッシュに歌い、ステージを跳ね回るラッセルとその後ろでステージの映像にからんだり、不思議な振り付けで踊ったりするロンのパフォーマンスで魅せてくれます。急に傾いたり伸びたり縮んだりするピアノの映像に向かって悪戦苦闘するロンのエア・ピアノ姿や、冒頭に登場した眼鏡女子団が再び妊婦姿(?)で現れ、謎のダンスを披露した場面には笑わせてもらいました。おそらく演出はロンのアイディアと思われますが、こうしたキワモノすれすれのパフォーマンスが成立するのも、ラッセルの安定した歌唱あってこそ。おいしいところは全部ロンに持っていかれるサダメの弟・ラッセルですが、1曲ごとに日本語で挨拶したりとサービス精神もたっぷりで、改めて優れた歌手だなあと再認識しました。第1部のラストは分厚いコーラスが繰り返される中、スクリーンに彼らがこれまで発表したアルバムが順番に映し出され、それをライターを持ったロンが燃やしていくというパフォーマンス。トッド・ラングレンがプロデュースして、“ハーフネルソン”名義でベアズヴィルからリリースされたデビュー・アルバム、イギリスで彼らをスターダムにのし上げた代表作『キモノ・マイ・ハウス』『プロバガンダ』、なぜかデヴィッド・フォスターと組んだ『イントロデューシング』、テクノ・ポップの名作『NO.1 in Heaven』「弱いものいじめ」、長年の沈黙を破って復活した『官能の饗宴』などの名盤の数々が次々と映し出され、燃え上がる。そして最後に最新作『エキゾチック・クリーチャーズ・オブ・ザ・ディープ』が堂々と映し出されて第1部終了。今、何度目かの絶頂期を迎えているスパークスの矜持が伝わってきて感動しましたね〜。


そして休憩を挟んで始まった第2部は『NO.1 in Heaven』の完全演奏。こちらは凝ったしかけはなく、バンドのパフォーマンスで惹きこんでいきました。ずっしりと響くドラムスとベース。会場をかけめぐるシーケンス・フレーズとシンセの響き。疲れの色などまったく見せないエネルギッシュなラッセルの歌。これらが一体となって壮大かつダンサブルな音空間が展開。「マイ・アザー・ヴォイス」なんてほとんどプログレですよ。でも必ずユーモアをしのばせているのがスパークスの魅力なんですね。荘厳なのにコミカル。いやもう圧倒されながらも踊りまくりました(笑)。
アンコールは4曲。今日のコンセプトに合わせて80年代以降の曲が中心でした。まずは「ディック・アラウンド」。続いて「ミッキー・マウス」。歌詞の一部を「TOKYO」に換えてくれたのがうれしい。更に「麗しの“マイ・ウェイ”」とたたみかけます。そして最後の最後にこの日唯一の70年代の曲が登場。もちろん「ディス・タウン・エイント・ビッグ・イナフ・フォー・ボス・オブ・アス」です。ギターがもっと爆音だったら、とちらっと思いましたが、細けえことはいいんだよ!最高に楽しいライヴでした。ありがとう、スパークス