結成40周年を迎えたというのにさっぱり音沙汰がない
キング・クリムゾンですが、フリップ先生個人は精力的な活動を続けているようで、昨年発表されたこのアルバムもその成果のひとつです。テオ・ト
ラヴィスはソフトマシーン・レガシーに参加したり、
デヴィッド・シルヴィアン等と共演するなどジャズ・シーンに留まらず活躍している管楽器奏者。本作は2007年1月に行われたセッション音源を、ポーキュパイン・ツリーのス
ティーヴ・ウィルソンが編集して完成させたもの。フリップが管楽器奏者と共演するのは久々のように思えますね。内容はというと、ジャズ的な丁々発止の
インプロヴィゼーションのやり取りを期待すると裏切られます。フリップの
サウンドスケープが描き出すたゆたうような音空間に、ト
ラヴィスのアルト・フルートとソプラノ・サックスが穏やかに交じり合う
アンビエント・ミュージックなのです。私は叙情味が増した近年のフリップの
サウンドスケープはお気に入りなのでその延長線上にある本作も好きです。ひんやりとした感触のあるフリップの
サウンドと暖色系のト
ラヴィスの音色の相性は思いのほか悪くないし、落ち着いたフルートの音色を聴いていると「海へ」のような
武満徹の
室内楽曲を連想する瞬間も多々ありました。“穏やかに交じり合う・・・”と上には書きましたが、独特の緊張感も底には流れていて、決してだらけた音楽ではないことは最後につけくわえておきます。