細野晴臣『omni Sight Seeing』
- アーティスト: 細野晴臣
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct(Japan)Inc.(SME)(M)
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: CD
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それはさておき、おりしもワールド・ミュージック・ブームだった時期に発表された本作ですが、今回新たに付されたライナー・ノーツにもあるように、いわゆるワールド・ミュージックとは異なる立ち位置にあったのが大きな特徴です。当時のワールド・ミュージックは例えばシェフ・ハレド『クッシェ』やサリフ・ケイタ『ソロ』のような“辺境の音楽と西洋のデジタル・ビートの激突”的なものが主流だった印象があるのですが(特にフランス経由のものがそうだった)、時空を越えた観光、というコンセプトで制作されたこのアルバムの音には攻撃性というものがありません。乾いた音像の中で日本民謡からデューク・エリントンにアンビエント、ライ、果てはアシッド・ハウスまでが涼やかに、軽やかに、ユーモラスに鳴り響く様は当時も、そして今も特異なものといえるでしょう。今回坂本龍一の『NEO GEO』も再発されましたが、こちらは正しく“辺境の音楽と西洋のデジタル・ビートの激突”の方法論でつくられたワールド・ミュージックの王道といえるものでタイトルからして挑発的な佇まいがありますね。この2枚を聴き比べると二人の資質の違いというのがはっきり分かるように思えます。