先週は日頃お世話になっているブログの方々とお会いしました。久しぶりの邂逅もあり、初めての出会いもありでしたが、音楽好きな仲間と過ごした時間はたいへん濃密なものでしたね。このアルバムはその日に新宿の
タワレコで購入した一枚です。演奏者の
青柳いづみこはかねてから優れた文章の書き手でもあり、なかでも
ドビュッシーについては『
ドビュッシー―想念のエクトプラズム (中公文庫)』といった力作を発表しております。また既にアルバムでも
ドビュッシーを多く取り上げてきているのですが、今まで耳にする機会がなくこのアルバムが初聴きとなりました。タイトルは
ドビュッシー自身の「音楽というのは色彩と律動づけられた時間でできている」という言葉からとられたもので、年代順に初期の「忘れられた映像」、中期の「版画」後期の「12の練習曲」が収録されております。どの曲も丹念に演奏されており、細やかな色彩の変化などをたっぷりと楽しむことができました。もちろん音楽とは時間芸術でありますが、
ドビュッシーの曲には映像的なイメージが伴っていることが多いのが特徴的です。このアルバムでは「版画」がその端的な例でしょう。絵画的なイメージが繊細な音の戯れによって描かれ、それが「
交響詩」のような物語性を伴っていないところに
ドビュッシーの音楽の新鮮さがあるように思えます。しかし
ドビュッシーはそこからも変化を続け、ついに「12の練習曲」では絵画的イメージを伴わない抽象的な世界へ到達します。抽象的ではあるがモノトーンではない、まさに「色彩と律動づけられた時間」だけでできている音楽。
ドビュッシーのことを知れば知るほどに愛着がます曲集です。