Lamp『ランプ幻想』

ランプ幻想

ランプ幻想

低空飛行なアルバムです。といってもネガティヴな意味ではありません。石川淳的な方法論としての“低空飛行”なのです。

わたしは元来飛行家の弟子なのだ。雲をも風をも低しと見て過ぎつつ厚みも重みもない世界へ入ろうとする離れ業はさることながら、わたしのもくろむのは低空飛行で、直下に現ずる此世の相をはためく翅に掠め取つて空に曼荼羅を織り成そうといふ野心を蔵している(後略)
石川淳「葦手」より

いわゆる“等身大”の日常をそのまま歌うのではなく、かといって根も葉もない絵空事を高らかに歌うのでもない、ここでのLampは自分達の日常を踏まえながら、それを一段高次の次元で表現することをもくろんでいるのです。クリスマス・シーズンに発表されたアルバムなのに、「儚き春の一幕」で始まり「ア・サマア・バケイション」で終わります。楽曲もこれまでのシティ・ポップ的な躍動感は薄まりました。にもかかわらずこのアルバムはこれまで以上のリアリティをもって聴く者の胸に迫ってきます。それは時流におもねることはしないが、超然とした位置に身を置くことも良しとしない、彼らの姿勢がはっきりと伝わってくるからではないでしょうか。表情は穏やかながらも底に強い意志が秘められていなければこうした音楽はつくれないと思います。これぞまさに“力作”と呼ぶにふさわしい作品であり、彼らの最高傑作ではないかと個人的には思うのです。

こちらで収録曲から「雨降る夜の向こう」と「儚き春の一幕」が試聴できます。

http://www.myspace.com/lampjapan