ブリジット・フォンテーヌ『ラジオのように』

ラジオのように(紙ジャケット仕様)

ラジオのように(紙ジャケット仕様)

若いうちに出会っていて良かったと思えるアルバムのひとつ。初めて聴いたのは中学の終わりの頃だったか、高校に入ってすぐの頃だったか・・・耳にしてすぐ恐怖に近い衝撃を受けて、しばらくは夜一人で聴き通すことができませんでした。そんな思いをしたアルバムはこれ以外には「ジョンの魂」しかありません。それが今では紙ジャケ、リマスターで再発されたCDをかけながら、平気の平左でこうしてレヴューを書いているのですから、なるほど“鈍感力”とはこういう現象のことをいうのですね(^^;)。
かつての衝撃を感じることはなくなったとはいえ、このアルバムに張り詰めている名状しがたい緊迫感は今でも充分に伝わってくるのです。ブリジットと彼女のパートナーであるアレスキー、そしてアート・アンサンブル・オブ・シカゴによって成り立つ三角形がギリギリのところで均衡を保っているところから来るものでしょうか。シャンソン?フリージャズ?それとも都会の民族音楽?ブリジットの狂気なら次作「3」の方に濃く感じられるし、フリーキーさを求めるなら、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ単体のアルバムを聴いた方が良いでしょう。しかしそれらが一体となって強力な磁場を形成しているのはこの『ラジオのように』しかありません。あの有名なフレーズ「世界は寒い」なんて今うっかり誰かが口走っても、何かギャグがすべったのかとしか思ってもらえないような気がしますが(笑)、このアルバムではいまだに恐るべき強度を持って聴く者の心を貫くのです。