デヴィッド・ガーランド『駄目な僕』*1

間違った時代に生まれた

駄目な僕

駄目な僕

彼はひどく怯えている。世界は大きな、不吉な場所だ。そして彼には頼るべき人もいない。誰も彼を理解してくれない。
ほら、ちょっとこれを聴いてごらんよ、とそんなときに誰かが言う・・・・
―ジム・フジーリ「ペット・サウンズ」エピローグより引用

今日は通勤の間にジム・フジーリ著『ペット・サウンズ』を読んでいたのですが、読了後に聴き返したくなったのは『ペット・サウンズ』そのものではなくて、このカヴァー・アルバムでした。ジム・フジーリは世界の言い知れぬ不安におののいていた時『ペット・サウンズ』に出会い、救われたことを情熱的な筆致で綴っていましたが、きっとこのアルバムの主役、デヴィッド・ガーランドも同じ体験をしたのでしょう。「駄目な僕」「イン・マイ・ルーム」「キャビネッセンス」「ドント・トーク「ワンダフル」「ティル・アイ・ダイ」「メント・フォー・ユー」etcといった収録曲を見れば彼がブライアン・ウィルソンの音楽のどこに共感したのかが一目瞭然です。ここでのデヴィッド・ガーランドは自分なりのやり方で、彼がブライアン・ウィルソンの音楽から得たなかでも「核」にあたるものを表現しようとしています。正直彼の歌唱はお世辞にも上手いとはいえないし、モンドっぽいアレンジもハイ・ラマズが『ハワイ』などで達成したものに比べると見劣りすることは否めません。発表当時評論家の萩原健太が酷評していたのもよくわかります。けれどもブライアン・ウィルソンの音楽の内省的な要素に惹きつけられる人は、このアルバムに不思議な愛着を覚えずにはいられないのではないでしょうか?
ちょうど私がそうであるように・・・・・。


ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)