武満徹は生前多くの対談集を残した作曲家で、私も全てはフォローしていないのですが、どの対談も徒に難解な用語は用いず、音楽や世界に対する関心を率直に語っていて、今なお傾聴に値する発言が少なくありません。そんな彼の数々の対談から編まれた本書は、
武満徹の世界に入っていこうとする人への恰好のガイドとなることでしょう。冒頭の「
徹子の部屋」出演時の
黒柳徹子との対談、最後の
黛敏郎と
岩城宏之との鼎談(3人とも故人となってしまったのが悲しい・・・)で作曲家の歩みと世界観をわかりやすく紹介し、その間に
民族音楽、邦楽との関わり、同時代の現代音楽の作曲家達との交流、ジャズからの影響、“言葉”への関心などを巡った対談を挟んだ構成は幅広いジャンルで活動を行った武満の姿を多面的に捉えています。強いていえば「映画」をめぐる対談がないのが玉に瑕ですが、それは「
シネマの快楽 (河出文庫)」などで補えばいいでしょう。ロック畑からは
デヴィッド・シルヴィアンとの対談が収録されています。個人的には“ポップ”“
エスニック”“
アンビエント”を軸に
細野晴臣と対談して欲しかったですね。