V.A『にほんのうた第一集』

童謡・唱歌のカヴァー・アルバム。この手のカヴァーは普通のポップスのカヴァーとはまた異なる難しさがあると思います。メロディーに力があるので変に凝ったアレンジにしても結局は普通にしっかりと歌った方が良かった・・・ということになりかねません。変則、正攻法、どんなアプローチで迫るにせよ、歌にエネルギーがないと原曲の良さが引き立たないということを改めて感じた一枚でした。例えば坂本龍一+中谷美紀大友良英+カヒミ・カリィのウィスパー勢。どちらもまとまりはあるのですが、聴いていると「もっとちゃんと歌え!はっきりとメロディーを聴かせてくれ!」とイライラします(笑)。キリンジも自作の時は軽妙に聴こえる歌唱が、今回はなんだか手を抜いているように思えてしまうのが不思議。キセルも似たような印象(もちろん両者とも本当に手を抜いているということはないでしょうが)。というわけで私が興味深く聴くことができたのは、三波春夫+コーネリアスを筆頭に、元久保田早紀ことくめさゆり、あがた森魚大貫妙子八代亜紀ということになります。皆強い個性の歌声の持ち主ですね。今回は参加していませんが、唱歌カヴァーの達人、矢野顕子もしかりです。ヤン富田のアプローチはユニークですが2回目以降は飽きてくる(笑)。高田蓮は歌わずに迫るという手もあったのではないか。三波春夫と比べられちゃうのはツライところ。・・・・と、必ずしも諸手をあげて絶賛とはいかないアルバムですが、こういった企画自体は素晴らしいと思うので続編に期待です。