マイルス・デイヴィス『クッキン』

クッキン

クッキン

普段は60年代〜70年代の作品を中心に聴いているのですが、50年代のマイルスもいいですね。まあ、当然ですが(笑)。CBSコロンビアに移籍が決まった直後に、契約消化のためプレスティッジで集中的に録音された、いわゆる“マラソン・セッション”中の1枚です。2日間で一気にアルバム4枚分が録音されたにもかかわらず、やっつけ仕事的な要素がまるで感じられないのがさすが。この『クッキン』は冒頭の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」が飛びぬけて有名ですが、それも納得の名演で、冒頭で聴こえるレッド・ガーランドのピアノの瑞々しい響きにはっとさせられるし、マイルスのミュート・プレイはいわずもがなの美しさ。このうえなくリリカルでありながらも湿っぽいおセンチな演奏には決してならないところがマイルスの凄みです。その他の曲も聴き応え充分で、特にポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズのリズム隊がごきげんです。いつの時代でもマイルス・バンドのリズム隊は強力で、その力がBGMとして流し聴きを許さないパワーを作品にもたらしていますね。