リディア・カヴィナ『オリジナル・ワークス・フォー・テルミン』

huraibou2007-09-29

オリジナル・ワークス・フォー・テルミン

オリジナル・ワークス・フォー・テルミン

音楽仲間の間でちょっとした話題になっているのがテルミンが付録としてついている雑誌「大人の科学マガジン」の最新号。
テルミン (大人の科学マガジンシリーズ)

テルミン (大人の科学マガジンシリーズ)

私も購入して組み立てたばかりですが、ある程度覚悟はしていたとはいえ、チューニングがとても難しいですね。現在のところ単なる“高周波発信器”の状態です(笑)。こうして自分で実際にやってみると改めてマエストロの凄さが実感できますね・・・というわけで、今日は「大人の科学マガジン」にもインタビュー記事が掲載されている、テルミン奏者の第一人者、リディア・カヴィナのアルバムを取り上げました。

リディア・カヴィナは9歳の頃からテルミンに触れ、親戚だった開発者のレフ・テルミン博士から直々の教えを受けた人物で、クララ・ロックモアと並んでテルミンの楽器としての地位を高めることに貢献しました。クララ・ロックモアが残したアルバムはクラシックの名曲をアレンジしたものが主で、細かいヴィブラートを多用した表情豊かな演奏が聴きどころですが、こちらはタイトル通り全てテルミンのためのオリジナル曲。1929年から1996年にわたる幅広い年代から選曲されているのが特徴です。作曲陣で目をひくのはパーシー・グレインジャーとマルティヌーでしょう。イギリスの民謡のアレンジやブラスバンドのための楽曲で知られるパーシー・グレインジャーですが、このアルバムに収録されている「フリー・ミュージック」は4台のテルミンのために書かれた作品。テルミンの特性を生かした、連続する音の変化を記した図形楽譜が用いられており、作曲者の知られざる前衛的な一面を教えてくれます。一方、チェコ出身で6作の交響曲をはじめとする幾多の作品を残したマルティヌーの作品「ファンタジア」はストリング・カルテットとテルミンの組み合わせによる聴き応えのある力作です。他にもリディア自身による組曲やミクソリディアン・モードを用いた楽曲、レフ・テルミン自身の声を素材に用いた楽曲など、テルミンの可能性を様々な角度から追求した作品が収録されており、テルミン演奏第一人者のアルバムにふさわしい充実した内容の一枚となっています。