7/22ミオ・フー NEW ALBUM 発売記念ライブ@晴れたら空に豆まいて

80年代初頭のパンク、ニューウェイヴの嵐がおさまりかけたころ涼やかな風のように登場してきたネオ・アコースティック。急速にパンク、ニューウェイヴに接近していた当時のムーンライダーズ周辺もこの動きに触発されていくつか忘れがたい作品を残してくれました。ライダーズ本体では『アマチュア・アカデミー』、オムニバス『陽気な若き水族館員たち』、そしてそのオムニバスにも参加していた今回の主役ミオ・フーの1st。いずれも私にとって思い出深いアルバムです。そのミオ・フーが23年という長い時を経て、今年待望の2ndアルバムを制作しました。今回はそのレコ発記念ライブです。時の隔たりで変わったもの、変わらないものは何なのかを確かめるべく、わくわくしながら会場に向ったのでありました。
果たして会場に入ると流れてきたBGMはネオアコの代表的存在のひとつ、エヴリシング・バット・ザ・ガールの3rd『ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト』ではありませんか。ああ、やっぱりと納得しつつも「ミオ・フーなら『アイドルワイルド』の方があってるんじゃないか?」なんてことを考えながら開演を待っていました。

突然音楽がヒップホップに変わり、まず登場したのはゲストのミンガス。意味深なグループ名で、どうしてもチャールズ・ミンガスとの接点をあれこれ探ってしまうわけですが、ヴォーカルの女性がどことなくジョニ・ミッチェルの雰囲気があること意外は関連がわからず(笑)。といっても失望したわけではありません。手数の多いベースとドラムに、プログレっぽいキーボードが絡み、かなり凝った構成の曲を奏でるのですが、ヴォーカルとメロディによってポップさをキープしており、とても興味深く聴くことができました。

次はゲストのジャック達かな、と思っていたら早くも主役の登場です。鈴木博文美尾洋乃に加え、サポートとして美尾の妹の美尾ようこ(漢字不明)洋香)、こまっちゃクレズマのただようこ、ジャック達の夏秋文尚という布陣。ゆったりとしたテンポで1stから「大通り」「ミラノの奇蹟」や「ジュリア」などを演奏。かつての名曲に落ち着いた味わいを加えたリリカルな音楽でした。
うっとりと浸っていたら、あっという間に第1部終了。ここでジャック達の出番です。タイツ〜シネマ(現在復活アルバム制作中)を経た一色進が率いるユニットですが、よい意味でミオ・フーと正反対の音楽性。キャッチーなギター・リフを中心としたバンド・サウンドによるパワー・ポップでした。一色進のトークもユーモアにあふれ、客席に笑いの渦が起こります。音楽性もただキャッチーなだけではなく、轟音を響き渡らせるハードな側面もあるのが魅力。久々にでかい音量のエレキ・サウンドを聴いたこともあり、ちょっぴり耳が痛くなりましたよ(笑)。

さて、再びミオ・フーがステージにあがり第2部です。今度はできたてほやほやの新作からの曲を演奏。シンプルでミニマム、ほのかにアンビエントの香りという基本部分はそのままに、ただようこのクラリネットやソプラノ・サックスがエスニックな要素を加え、さらに所々に差し挟まれる音響派的な響きが新機軸。ムーンライダーズ『ダイア・モロンズ・トリビューン』中の博文曲「棺の中で」を発展させたような印象を受けました。そこには確かに現在のミオ・フーの音楽があったのです。それが何よりもうれしいことでしたね。
雄弁な一色のトークとは異なる朴訥な博文の語りもユニーク。新作のジャケットが前作とほとんど同じデザインであることに触れて「オブスキュア・レーベルを意識しました」なんてマニアックなネタでウケを取ろうと・・・していたんだろうなあ、たぶん(笑)。*1

アンコールではジャック達も加わった豪華なセッションで1曲。そして美尾、博文の2人だけで私が一番好きな彼らの曲「ピエロ・ル・フー」をしっとりと歌って終了。懐かしさと新しい発見両方の喜びがあった充実した一夜でした。

*1:オブスキュア・レーベルとはブライアン・イーノが1975年に立ち上げたレーベル。イーノ自身の「ディスクリート・ミュージック」やギャヴィン・ブライヤーズ「タイタニック号の沈没」などをリリースしていますが、どの作品も同じデザインのジャケットなのでした