いとうせいこう×奥泉光「文芸漫談 笑うブンガク入門」

文芸漫談 笑うブンガク入門

文芸漫談 笑うブンガク入門

上の奥泉光いとうせいこうが「ブンガク」について漫談スタイルでじゃべりたおす一冊。一見散漫なようでいて、示唆に富む発言を随所に見ることができます。
個人的に爆笑したのは、日本語以外にも無意識のうちに様々なコードを参照してわれわれは世界をつくりあげている、という例として奥泉が挙げた部分。

ぼくが学生だったころ、講義で「古池や 蛙とびこむ 水の音」という俳句が扱われたんです。ジェイってアメリカ人がその意味を解釈したんですが、(中略)「わびさびはおれに任せろ」と日頃ほざいているやつなんですが、そのジェイが「このカエルはとりあえず一万匹はいるな」っていうんです」

若き奥泉はそんなジェイに、きみはわびさびが分かっていないと諭したそうです。ジェイは「そうだったのか、ちょっと勉強してくる」と反省。しかし次の講義での「しずかさや 岩にしみいる 蝉の声」で「わびさびはおれに任せてくれ、いまや完璧に把握しているぞ」と自信たっぷりに「この蝉は一匹だ。せいぜい二匹」・・・蝉は一匹でもものすごくうるさいから、というのがその理由だそうです。
笑えるエピソードですが、他国の文化に接したとき自分もジェイと同じような珍解釈をしている可能性は充分にあるわけで、考えさせられるものがありますね。