橋本一子『Ub-X』

Ub-X

Ub-X

YMOのサポート・メンバーから「ラーゼフォン」の音楽まで幅広い音楽領域を飛び回り続ける橋本一子ですが、あまりに何でもできちゃうので、作品によってはとらえどころがないように思えたこともありました。でも、これはカッコイイ!彼女の才気が隅々まで充溢している音楽となっています。
Ub-Xとは“ユビークス”と読み、“Ubiquitous Groove ProjectX”を略したものです。偏在するグルーヴを追及するプロジェクト、という意味ですかね。メンバーは橋本に加え、ベースに井野信義、ドラムに藤本敦夫というピアノ・トリオ編成。しかしそのサウンドはいわゆるジャズらしいものではありません。シャープなポリリズムを叩き出す藤本と要所要所にくいこんでくる井野に対し、ピアノと時にはヴォイスも駆使して渡り合う橋本、この3人のスリリングなインタープレイが展開されていきます。個人的には佐藤允彦がスティーヴ・ガット、エディ・ゴメスと組んだ『ダブル・エクスポージャー』というアルバムに近いものを感じました。ガットとゴメスによる“倍音列の先端まで突き抜けるように見えるデジタル・リズム・セクション”(佐藤談)にクールで知的なピアノが絡み合う『ダブル・・・』のコンセプトをより発展させたように私にはUb-Xの音が聴こえるのです。一瞬一瞬はこの上なくスポンティニアスなのに、聴き終わると全て計算ずくだったかのように思える3人のバランス感覚が冴えに冴えていて素晴らしい。現在2ndの録音も進行中(今日が最終日らしい)のこのユニット。次はどんな姿を見せてくれるかとても楽しみです。

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http://homepage2.nifty.com/najanaja/ub-x.html
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