ピート・シンフィールド『スティル』

スティル(K2HD/紙ジャケット仕様)

スティル(K2HD/紙ジャケット仕様)

初期キング・クリムゾンにおいて詩作で大きな貢献を果たしたピート・シンフィールドが、クリムゾン脱退後、ELPが設立したレーベル“マンティコア”から発表した唯一のソロ・アルバムです。
演奏陣にはグレッグ・レイク、メル・コリンズ、キース・ティペット、ボズ・バレルといったクリムゾン人脈のミュージシャンが多数参加しています。曲調は意外とヴァラエティに富んでいて、カントリー・ロック風の曲(私は結構好き)やジャズ・ロックっぽく展開する曲などもあるのですが、全体としては薄い靄のかかったような音像とピート自身の、決してうまくはないけれどそれなりの味があるヴォーカルによって統一的なイメージがあります。幻想的な歌詞については言うまでもありません。
とはいえ、聴いていてしっくりするのはやっぱり「シー・ゴートの詩」や「パイパー」といた牧歌的な曲になります。ラストの「ナイト・ピープル」のエンディングのブラスは迫力がありますが、あまりピートの存在感が感じられません。ピートの朗読とグレッグ・レイクのヴォーカルが交互に登場するタイトル曲はファンの間では名曲とされているのですが、これもピートよりグレッグ・レイクが主役になっているからなあ。確かにアルバムのハイライトであることにはちがいないのですが・・・。
本作を傑作!と呼ぶのはちょっとためらってしまいます。けれどもピート・シンフィールドの世界に愛着がある者にとっては押えておきたい一枚といえるでしょう。