『THE BEATLES GREGORIAN SONGBOOK』

Beatles Gregorian Songbook: Liverpool Manuscripts

Beatles Gregorian Songbook: Liverpool Manuscripts

8/28付の山尾敦史さんの日記ドメインパーキングを読んで即タワレコ渋谷店にかけつけて購入。ビートルズ・ナンバーをグレゴリオ聖歌のスタイルでカヴァーしたアルバムです。
グレゴリオ聖歌西洋音楽の重要な源泉のひとつで、岡田暁生西洋音楽史』(中公新書)の定義を引用すると「単旋律によって歌われる、ローマ・カトリック教会の、ラテン語による聖歌」です。最近では“癒し系”の音楽として盛り上がったこともあるので、知らず知らずのうちに耳にしている方も多いはず。CDもたくさん出てます。浮遊感のある独特の節回しの旋律を歌う修道士たちの歌声が、教会の深いエコーの中から浮かびあがる様に耳を傾けていると確かに不思議と落ち着いた気分になってくるんです。高校時代の音楽の先生が授業で「深夜にひとりで心静かにグレゴリアン・チャントを聴くのいいんだよ・・・」と告白して皆からネクラ扱いされたことを思い出しました。ごめんなさい、先生。あなたは正しかった(笑)。
それはともかく、グレゴリオ聖歌を少しでも聴いたことがあるならこのアルバムは爆笑ものです。おなじみのメロディがグレゴリオ聖歌特有の節回しと響きで次から次へと出てくることもさることながら、山尾さんの日記に詳しく書かれていますが、曲の解説から設定から古楽調で徹底しているのが面白い。ファーザー・ジョン、ファーザー・ポール、ブラザー・ジョージという3人の中世の修道士が、「レン、マック、ハリー」という変名を名乗り、リチャードという召使いを仲間に引き入れ「ザ・ロンリー・ハーツ・ミンストレルズ」を結成した(解説の必要はいりませんよね)、なんてことが大真面目に書かれているんですよ。収録曲はいくつかのグループに分けられているのですが、その章題も“Sit tibi terra levis.”(大地が汝にとり軽くありますように)とか、“Omnia vincit amor”(愛は全てに打ち勝つ)としっかりラテン語の格言となっています。ちなみに“Sit tibi terra levis.”のグループになっている曲は「ブラックバード」「マザー・ネイチャーズ・サン」「ビコーズ」。“Omnia vincit amor”のグループは「ザ・ワード」「愛こそはすべて」「レット・イット・ビー - ジ・エンド」です。納得でしょ。
群雄割拠のビートルズ・カヴァーの中に新たな一石を投じたユニークなアルバムです。「ゼア・イズ・ア・プレイス」や「ジ・インナー・ライト」といった渋い曲を選んでくるところも心憎くて、感心しました。当分就寝前に聴く音楽として重宝しそうです。 

関連リンク

<過去の日記から>
・これも就寝前に聴くのがぴったりのビートルズ・カヴァー・アルバム
http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20051109