ザ・ウッズ・バンド『ザ・ウッズ・バンド』

The Woods Band

The Woods Band

初期のスティーライ・スパンに在籍していたゲイ&テリー・ウッズ夫妻がスティーライ脱退後結成したバンドの唯一の作品です。71年作。
このアルバムの後の夫婦名義での作品の評価が高いので(乞CD化!国内盤で)、過渡期の作品として捉えられがちなのですが、どうしてどうして。ザ・バンドの影響の濃い、土臭いサウンドダルシマーやコンサンティーナといった民族楽器を加えたアンサンブル、自作曲中心ながらトラッドも随所に挿入された楽曲群、そしてもちろんゲイ&テリーの味わい深いヴォーカルと聴き応えのある腰の座ったアルバムです。“ケルティック・ロック”を標榜していた時期のドノヴァンの作品、『オープン・ロード』に通じるものも感じました。ほぼ同時期の作品ですしね。
冒頭の「エヴリタイム」はテリーのヴォーカルによる、最もザ・バンドの影を感じさせる曲。続くインスト「ノイジー・ジョニー」はマイク・オールドフィールドがスワンプに挑戦した、といった趣のある曲で、マイク・オールドフィールドとゲイ&テリー・ウッズ両者のルーツがアイリッシュ・ミュージックであることを実感させられます。3曲目のトラッド・ナンバー「1月の雪」でようやくゲイ・ウッズのヴォーカルが聴けます。澄んだ声なのだけど、どこかくすんだ味わいのあるゲイの歌声のなんと素晴らしいことか。そしてジグ・ナンバー「ラメント・アンド・ジグ」を挟んで「ドリームス」で満を持して2人のヴォーカルによるコーラスが響き渡る瞬間がこのアルバムのハイライトでしょう。初めて聴いたときは震えました。典型的なエレクトリック・トラッド「アズ・アイ・ローブド・アウト」、どこかフォザリンゲイを思わせる「プロミセス」、終曲の「オーヴァー・ザ・バー」と続く後半の流れも悪くありません。コクのある音楽とはこういうのをいうのでしょうね。