ペンタングル『Captured Live [DVD]』

captured

ペンタングルが1972年にフランスのTVショーに出演したときの記録です。彼等はこの後まもなく解散してしまうので、最後期の彼等の姿を捉えた貴重なドキュメントといえるでしょう。音量レベルが小さいとか、セットが殺風景過ぎるとか、インプロのとき画面に余計なこととしか思えない稚拙な特殊効果を加えているとか、文句を言いたいところも多々あるのですが、こうして映像が残っていることはありがたいこと。


全6曲で41分。中央にはジャッキー・マクシーがスツールにこしかけ、表情を変えずに淡々と歌います。向って右手にはバート・ヤンシュ。隣にドラムスのテリー・コックス。左手にはジョン・レンボーン。その隣にウッド・ベースのダニー・トンプソンといった配置です。選曲は後期のアルバム『リフレクション』と『ソロモンズ・シール』から3曲ずつとなっています。最も印象に残るのはバート・ヤンシュで、「Wedding Dress」ではバンジョー、「Willy O'Winsbury」ではダルシマーを手に取り、見事な演奏を聴かせてくれます。割りを食ったのがジョン・レンボーンで、要所要所で繊細なリード・ギターを聴かせてくれるのですが、あまり画面に映らず(最後の曲「People On The Highway」なんて全然映らない。多分演奏もしていないと思うけれど、それにしてもねえ)、影が薄いです。リズム隊の2人は黙々と磨きぬかれた職人芸を披露しております。


全体として決して悪い演奏ではないのですが、ライナーノーツで斉藤勇氏が触れている通り、初期の演奏に秘められていた水の中で燃える炎のような、張り詰めるような緊張感が感じられないのが残念です。もう少し前にこのDVDに接していたらあまりこういった不満は感じなかったのでしょうが、こんなすごい演奏を先に見てしまったものですから*1・・・。とはいえ、ファンなら持っていて損はしない作品だと思います。願わくは初期の彼等の映像がDVD化されんことを。

*1:ただし、これがいつの時期なのかは不明です。でもこのクールかつヒップなパフォーマンスは圧巻!