スパークス『プレイジャリズム〜盗作の世界〜』

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今日もスパークス。1997年に発表されたセルフ・カヴァー・アルバムです。タイトルのつけかたが如何にも彼等らしいですね。多彩なサウンドで生まれ変わった代表曲を楽しめます。こういった企画盤の中ではかなり成功しているのではないでしょうか。彼等の場合、オリジナル・アルバムのサウンドはひとつのトーンでまとめることが多いので、こうした幕の内弁当的な作品は新鮮に響きます。


まず耳をひくのはトニー・ヴィスコンティのストリングス・アレンジが施された数曲。彼等のオペラティックな側面がわかりやすく伝わってきます。最近のアルバムで聴かれるサウンドのヒントとなっているかもしれません。その他、得意のユーロ・ビート色を強めたアレンジや、モダン・ポップ風に味付けされたナンバー、ちょっとディキシーっぽい雰囲気を持ったナンバーなどで楽しませてくれますが、目玉となっているのはゲストを加えたナンバーです。まずはフェイス・ノー・モアをゲストに招いた「This Town Ain't Enough For Both Of Us」と「Something For The Girl With Everything」。スパークス史上最もハードなサウンドに、ラッセル・メイルのファルセットとマイク・バットンのドスの効いた低音ヴォイスが絡み合うのが何ともストレンジな感触をもたらしクラクラしますね。イレイジャーを招いた「Amateur Hour」も聴きのがせません。
アルバムのラストは、ジミー・ソマーヴィルとジョイントして「The No.1 Song In Heaven」〜「Never Turn Your Back On Mother Earth」。この2曲の流れは最近のライヴでも取り入れられています。今度の来日でも期待できますね。こうしてみると、このアルバムは単なる企画モノに終わらず、現在の彼等の活動につながる萌芽を見出せる重要な位置にある作品といえます。