岡田徹『海辺の名人』
- アーティスト: 岡田徹
- 出版社/メーカー: アブソードミュージックジャパン
- 発売日: 2004/11/26
- メディア: CD
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アルバム・コンセプトは“海辺に建てられた一軒の家”すなわち渚のアンビエント・ハウス・ミュージックであるとライナーには書いてあるのですが、確かにセイゲン・オノによるミックスがアンビエント感覚をもたらしていると言えなくはないものの、正直あまりピンときません。私の感覚では、このアルバムはマーティン・デニーを岡田徹的に解釈した、エキゾティックでとびきりポップなリゾート・ミュージックです。特に冒頭、「ひき潮」をボ・ディドリー・ビートで料理したカヴァーが見事。既に誰かがやっていそうでやっていなかったアプローチではないでしょうか。続くオリジナル曲も岡田のもつ洗練されながらも胸弾むメロディーに、(楽曲提供もしていますが)渚十吾が言葉でイメージを補強して洗練されながらも親しみやすい無国籍な空間をつくりあげることに成功しています。8曲目「海とすれすれの空」は元々ムーンライダーズ用につくられた、本人曰く「涙は悲しさで、出来てるんじゃない」の姉妹曲。なるほどそう意識して聴いているとライダーズが歌っている姿が目に浮かぶよう。メロディ・ラインをバグパイプがとっているのも心憎い技で、岡田ファンなら「羊のトライアングル」や「黒いシェパード」といった曲を思い浮かべる人は多いことでしょう。他にもリゾートものの定番であるウクレレや、ハープ、ハーモニカ、バンジョーといった生楽器を打ち込みの中にさりげなく忍ばせるアレンジは流石です。