ホレス・シルヴァー『ザ・ケープ・ヴァーディーン・ブルース』

ザ・ケープ・バーディーン・ブルース(紙ジャケット仕様)

ザ・ケープ・バーディーン・ブルース(紙ジャケット仕様)

id:osamuswingさんが「真夜中に聴きたい音楽」セレクトに選曲したタイトル曲の素晴らしさに惹かれて、久しぶりにアルバム全体を聴き返しました。一般的には前作『ソング・フォー・マイ・ファーザー』の方が有名ですが、こちらも負けず劣らずの傑作。かつて彼のグループのフロントで活躍したブルー・ミッチェルやジュニア・クックこそ不在ですが、代わりにウディ・ショウとジョー・ヘンダーソンという強力なメンバーが参加。ハード・バップやファンキー・ジャズに留まらないホレス・シルヴァーの幅広い音楽性がわかりやすく表現されているのです。


タイトル曲の由来はシルヴァーの父が生まれたケープ・ヴェルデ諸島に由来するもの。アルバム録音の前の年にブラジルを訪れたシルヴァーがそこで刺激を受けたサンバのリズムを導入してつくりあげたこの曲は、シルヴァーによる弾むようなリフが終始曲を引っ張っていく最高にごきげんなナンバー。続く「アフリカン・クイーン」も独特のエキゾティズムが魅力的で、ジョー・ヘンダーソンのワイルドなソロが聴きものです。そして3曲目「プレティ・アイズ」はワルツ・ナンバーと、個性的な曲が並んだ前半がこのアルバムのカラーを決定づけています。


後半の3曲も聴き応え充分。トロンボーンの名手J.J.ジョンソンが加わった6人編成でサウンドがカラフルになりました。ジョンソンは「ナットヴィル」で早速快調なソロを披露。他のメンバーも負けじと快活なソロをとっていきます。この勢いは最後のヘンダーソン作曲「モー・ジョー」まで途切れることはありません。ロジャー・ハンフリースの躍動感漲るドラミングもこのアルバムの重要な要素でしょう。収録曲のどこをとってもシルヴァー・ミュージックの楽しさがあふれ出してくる素晴らしい一枚です。