デヴィッド・シルヴィアン『ブリリアント・トゥリーズ』

ブリリアント・トゥリーズ(CCCD)

ブリリアント・トゥリーズ(CCCD)

いつも興味深く拝見しているドメインパーキング4/19付の記事の中で、デヴィッド・シルヴィアンがこのアルバムで武満徹作品をサンプリングして使っていると語っていたことを知り、繰り返し聴いていますが、はてどこで使われているのやら、さっぱり分かりません(笑)。それはともかく、このアルバムは彼のソロ・キャリアの第一歩を記した名作であることは改めて実感した次第です。


参加メンバーを見てみるとスティーヴ・ジャンセン、リチャード・バルビエリ、坂本龍一といったジャパン時代からの人脈に加えて様々なゲストがクレジットされています。後年コラボレーション・アルバムを制作するホルガー・シューカイが既にここで登場してしているのも注目ですし、ブリティッシュ・フォーク界の重鎮、元ペンタングルのダニー・トンプソンの名前も目をひきますが、特に重要なのは3人のトランペッター(厳密にいえば一人はフリューゲルホルンですが)の参加です。まず一人は霧のような音色が特徴の、ブライアン・イーノライ・クーダーとの共同作業でも有名なジョン・ハッセル。2人目はECMに多数の名作、名演を残しているケニー・ホイーラー。そして3人目ジャンルを越えた幅広い活躍を展開しているマーク・アイシャムです。シルヴィアンは共同でプロデュースを行ったスティーヴ・ナイが生み出す、翳りのあるやや硬質な質感のサウンドを基盤に、曲によってこの3人を巧みに配し、アルバムに多彩さとしなやかさを導入しています。今の耳で聴いても刺激的なところがたくさんある音楽ですね。中でもタイトル曲はジョン・ハッセルの無国籍感覚と音色が効果的に生かされた名曲です。


現在このアルバムに改めて向かい合ってみると、現在のシルヴィアンの活動につながる萌芽がいくつもあることに気がつかされます。ホルガー・シューカイとのコラボはもちろん、「レイン・トゥリー・クロウ」の結成や、『ブレミッシュ』でのデレク・ベイリーとの共演もこのアルバムに含まれている可能性のひとつを追求した結果に思えてくるのです。これでロバート・フリップが加わっていたらまさしく“処女作に全てがある”と呼べるものになっていたでしょうね。





それにしてもリマスター盤がCCCDなのはなんとかならないのか・・・