エンヤ「ア・デイ・ウィズアウト・レイン」

ア・デイ・ウィズアウト・レイン

ア・デイ・ウィズアウト・レイン

・・・実はかなり好きです、エンヤ。最新作はまだ買ってないけど(まず廃盤になることはないと思えるので焦って買おうと思わない)、それ以外のオリジナル・アルバムは全部持ってます。マイク・オールドフィールド好きとしては、「サリー・オールドフィールドが安易なポップ路線に走らなかったらきっとエンヤのようなアルバムを創っただろうなあ」なんて思うこともあるんですよ。ヒーリング・ミュージック、なんていうぞっとしない呼び方で語られることもあるエンヤですが、じっくりと時間をかけて丁寧に綴られた彼女の音楽には安直なレッテル貼りなんてどうでも良いと思わせる、音楽それ自身の魅力がどの作品にも宿っていると思います。


あまりエンヤに興味が無い方には、彼女のアルバムはどれも同じように聴こえるかもしれません。実際、綿密に重ねられた彼女自身によるコーラスとストリングスを基調にした音楽、というのはどのアルバムにも共通していることなのですが、ひとつひとつのアルバムは異なったカラーを持っています。夜の静謐な空気をはらんでいるような『シェパード・ムーン』や、スケールの大きさを感じさせる『メモリー・オブ・トゥリーズ』などなど。そして彼女の作品中もっとも明るく、牧歌的な響きなのが今回取り上げた『ア・デイ・ウィズアウト・レイン』。4曲目だけが緊張感のあるマイナー調なのですが、他はどの曲も“萌えいずる春になりにけるかも”*1的な穏やかな喜びに満たされています。今の季節に聴くのにもっともふさわしいアルバムといえるでしょう。

*1:「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいずる春になりにけるかも」(万葉集巻八・志貴皇子)より