トラフィック「ザ・ラスト・グレート・トラフィック・ジャム」

Last Great Traffic Jam [DVD]

Last Great Traffic Jam [DVD]

まず最初に文句を書いておくと、しばしば画像に特殊効果が施されているのですがセンスがあまりにも古すぎです。普通に演奏している姿を映してくれればよかった。もうひとつ、「Glad」がいきなり終わってしまうのが残念。実際はおそらくノン・ストップで「Freedom Rider」に続いていたと思うのですが、がんばってそこまで収録して欲しかった!。



さあ、これで心おきなく絶賛することができますよ。
1994年のトラフィック再結成ツアーの模様をドキュメント風にとらえたのがこのDVD。そしてこれはまぎれもなく過去に彼等が残してきた数々の名作を凌駕する、トラフィック最高傑作といえる作品になっています。最初に述べた欠点を差し引いてもなおあまりある演奏の壮絶さと貴重な映像のオンパレードに最後まで目が放せません。まさかこの時期にここまで充実していたツアーを展開していたとは・・・。これまでの彼等の試みが集大成された、トラフィック・ミュージックの完成形をここで聴くことができるのです。


再結成された時点で既にクリス・ウッドは亡く、グループの中心はスティーヴ・ウインウッドとジム・キャパルディの2人です。この2人に加え後期トラフィックに参加していたベースのロスコー・ジー、パーカッションのウォルフレート・レイズ・ジュニア、キーボードとサックス、フルートを担当するランダル・ブランブレット、キーボードとギターを演奏するマイク・マッカヴォイが脇を固めています。


このメンバーによる新生トラフィックの魅力を手っ取り早く知ることができるのが、ラスト・ナンバーの「Gimme Some Lovin'」です。スペンサー・デイヴィス・グループ時代からのウインウッドの代表曲が強烈なアフロ・ファンクとなって甦りました。ジム・キャパルディとウォルフレートが叩き出す怒涛のようなポリリズムの嵐。ロスコー・ジーのベースは大きなうねりを与えてバンド全体をスイングさせる。ランダルとマイクの演奏も熱い。この強靭なバッキングを背にウインウッドのオルガンとヴォーカルが加わるのですから、もう何をかいわんや、です。「Medicated Goo」のような渋いナンバーも「Low Spark of High Heeled Boys」といった有名な曲も同様に新たなエネルギーを宿されています。「Dear Mr.Fantasy」ではジェリー・ガルシアがゲストで参加しているのも見所のひとつでしょう。
そして、今ではもう叶わぬこととなってしまった、ウインウッドとキャパルディの両雄が並び立って歌う「John Barleycorn (Must Die)」には胸が熱くならずにいられません。


曲と曲の間には楽屋の様子やリハーサルの模様が収録されていて、リラックスした彼等の姿に接することができます。ステージを降りると驚くほど普通の人なウインウッドに対し、怪しげな風貌と愛すべき個性で目を惹きつけるのがキャパルディ。キャパルディの行動を映しているシーンを見ていると、ほんの少しだけフランク・ザッパのDVD「ベイビー・スネイクス」を連想します。昨年のキャパルディの死によって、トラフィックの新たな復活はもう多分ありえないこととなってしまいました。彼自らヴォーカルを取る「Light Up or Leave Me Alone」で生き生きと躍動している姿を見ていると改めてその死が惜しまれます。


※国内盤の画像がなかったので輸入盤のを掲載していますが、国内盤には字幕もついているので、ドキュメンタリー的要素もあるこの作品には国内盤をお勧めします。