高橋幸宏「薔薇色の明日」
4月1日なので架空のアルバム・レビューでも書こうかなと思ったけれど、ネタが思い浮かばなかったのでいつも通りのレビューです。
このアルバムを取り上げたのはもちろんバカラック「エイプリル・フールズ」のカヴァーが収録されているから。このアルバムで初めて“バート・バカラック”という名前を意識したのでした。その意味でも忘れがたいアルバムです。その後も何度かバカラック・ナンバーを取り上げている幸宏ですが、私としてはやはりこの「エイプリル・フールズ」に一番思い入れがあります。詞の世界も幸宏のロマンティズムにぴったりで、最初にこのバカラックとしては比較的地味な曲*1を選んだのも今となってはうなずけるところですね。
その他では「蜉蝣」「前兆」といった日本語詞の曲がいい。この後、現在に至る幸宏の路線のプロトタイプとなったといえる名曲でしょう。ここでの幸宏の歌唱はまだ生硬な面が見られるものの、それが今の彼にはない“青さ”を感じさせるのが逆に新鮮。
なぜか昨年のソロ・アルバム再発から漏れてしまったこのアルバムですが、決して「ニウロマンティック」や「What Me Worry?」に劣らない、幸宏の持つダンディズムと叙情性がわかりやすい形で表現された美しい作品です。今年こそリマスターでの再発を望みます*2!
*1:映画「幸せはパリで」のエンディング・テーマ。ディオンヌ・ワーウィックが歌ったオリジナルが全米37位。大ヒットした、とはいえない曲ですね