アンディ・サマーズ&ロバート・フリップ「心象表現」

心象表現(紙ジャケット仕様)

心象表現(紙ジャケット仕様)

1982年作。当時のアンディ・サマーズはポリスの一員として活躍。ちょうど「ゴースト・イン・ザ・マシーン」と「シンクロニシティ」の間の時期にあたります。まさにグループの音楽性がピークになろうとしているときですね。一方ロバート・フリップはこの年80年代クリムゾンの2nd「ビート」を発表しています。新しいクリムゾンで試みた方法論が完全に確立した時期といっていいでしょう。


内容は2人の持ち味が対等な関係で発揮されているもの。いかにも「らしい」フレーズがそこかしこで出てきます。ただしここにはお互いのグループが持っていた緊張感がありません。そのせいでしょうか、私の目にした限りではあまりこのコラボレーションに対して高い評価は与えられていないですね(アンディによると「とても評判が良かった」そうですが・・・)。笹川孝司氏による新しいライナーノーツを読んでみても「本作の内容は多分に実験色の強い習作といえるだろう」とか「果たしてこのプロジェクトが成功したのかどうかはわからない」と、なんとも微妙な言いまわし。今もってこのコラボレーションを2人のキャリアの中にどう位置づければよいのかは、はっきりとしていないようです。


正直、私もリアルタイムで聴いたときはあまりピンとこなかった作品です。当時の私は70年代クリムゾンに夢中。今は大好きな「ディシプリン」さえあまり良いとは思っていませんでしたからねえ。結局この活動がその後の2人にどう反映されたのかは私もさっぱりわかりません。だから当時数回聴いただけで、その後は特に聴こうとする必要性も欲求もなく、ずっと聴かずにいたままでした。紙ジャケになる、という情報に接してようやく「そういえばこんなのもあったなあ。どんなのだったっけ?」という好奇心がわいてきたのです。


今でもポリスやキング・クリムゾンは大好きなバンドですが、当時のような熱い思い入れはありません。逆にそれが良かったのでしょう、久しぶりに接したこの作品、実に普通に楽しむことができました。80年代特有の軽い音質もかえって音響派に通じる面も感じられてプラスの方向に作用しています。なるほど、確かにこれは習作どまりであり、新しい何かが生み出されたとはいいにくいと思いますが、2人のギターの絡みはやはりユニークなもの。今ではちょくちょく気軽にかけて楽しんでいます。ただ、2年後の2ndは今でもあまり面白くないなあ・・・。