セクスミス&カー「デスティネイション・アンノウン」

Destination Unknown

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カナダのシンガーソングライター、ロン・セクスミス。私はあのエルヴィス・コステロが絶賛した1stとその続編的な2ndが大好きで、今でもときどき取り出しては聴いています。ミッシェル・ブルームとチャド・ブレイクのプロデュース・ワークも彼の曲の良さを充分に引き出した、見事なものでした。その後のアルバムも2,3枚買っていますし、決して悪い作品とは思いません。ですが、どうしても最初の2枚には及ばないような感じがして、あまり聴きこむことはなく、いつしか彼の動向にはあまり注意を払わなくなりました。
そんな私が久々に耳にしたロンの新作は、ツアー・ドラマーのドン・カーと組んだユニット名義で発表されました。曲は全てロンによるものですが、ソロ・アルバムと最も異なる点は全曲ロンとカーによるデュエットで歌われていること。
7曲目の「Only Me」にエヴァリー・ブラザーズの雰囲気があることに気づいたロンが、試しに2声のコーラスでやってみたらいいのでは、と閃いたそうですが、ロンとカーのハーモニーによって彩られた柔らかなメロディーは、どこかノスタルジックな感覚を聴く人の胸に呼び覚ましていきます。アコースティック・ギターマンドリン、チェロなどを用いたサウンドも温かく2人の声を包み込む。ロンのソングライティングの確かさを改めて実感できたアルバムでした。どの曲も本当にいい味出しています。