エマーソン・レイク&パーマー「恐怖の頭脳改革」

恐怖の頭脳改革(K2HD紙ジャケット仕様)

恐怖の頭脳改革(K2HD紙ジャケット仕様)

今週はいろいろ疲れました。しぼみがちな心をとにかく高揚させたい、と思い選んだのがこのアルバム。スカッとさせてくれるプログレとして本作の右に出るものはない、と言い切ってしまいましょう。まあ、スカッとしたいときにプログレなんか聴くなと言われそうですが。
73年に発表された通算5作目となるこのアルバムでは、メンバー3人がこれまでに磨いた技を集大成。グレック・レイクの弾き語りものも、ブギっぽい曲もこれまでに比べてぐんと磨きがかかっています。そしてエマーソンのアレンジによる、ヒナステラのピアノ協奏曲「トッカータ」も、「展覧会の絵」や「ホウダウン」での試みを一段と昇華させた見事な出来栄え。作曲者のヒナステラが賛辞を送ったというのも頷ける話です。
アルバム後半は大曲「悪の教典#9」。これがキング・クリムゾンだったらもっと神秘的な歌詞で、真剣勝負的な演奏になるでしょうし、イエスなら、わかったようなわからないような歌詞をつけているところでしょうが、彼等は“Roll Up, See The Show!”とシャウトしちゃいます。エンターテイメント精神溢れていますね。もちろんそこがいいところ。ここでのキース・エマーソンは絶好調で、中間部の第2印象ではプリベアード・ピアノ的な音色を用いたりするなど、おっと思わせるアプローチも。この曲を聴いているとエマーソンがバンドのグルーヴを生み出していることが良くわかります。レイクのベースもカール・パーマーのお騒がせドラムも、エマーソンについていくのに必死、という印象。グレック・レイクがプロデューサーであることにこだわったのは、演奏面では主導権を握れないことをわかってからじゃないかなあ。そんな邪推はともあれ、本作はELPのポップさが理想的な形で表現された、代表作と呼ぶにふさわしいアルバムと思います。