スーパーサイレント「6」(asin:B000AU1P54)

huraibou2005-11-10

今年の夏以降、続々と刺激的な作品が国内盤として発売されているノルウェーのレーベル、「ルーネ・グラモフォン」。私の聴いた限りではテクノ、エレクトロニカの要素を巧みに即興と溶け合わせた音楽性を持つ作品が多いのですが、今回取り上げたスーパーサイレントは、それらとはやや異なる音楽性を持っています。
「6」は彼等の4作目にあたるアルバムで、なぜ4作目なのに「6」かというとデビュー・アルバムが3枚組で「1−3」となっているからです。メンバーはヘルゲ・ステン(audio virus)、ストーレ・ストーレッケン(key,synth)、ヤーレ・ヴェスペスタ(ds)、アルヴェ・ヘンリクセン(tp,electronics)の4名。しかし彼等はこれまでの作品で自分の名前をカヴァーに記したことはないそうです。
その理由は彼等の方法論と大きな関係があります。メンバーが集まるのはステージかレコーディングのときだけ。そしてその音楽にはメンバー同士がソロを競い合うという局面は存在しません。あくまでもその場での集団即興を追求していくというのがグループのコンセプトなのです。このアルバムもリハーサル、オーヴァーダビングなしの完全即興演奏が収録されています。
私はスーパーサイレントの演奏はこのアルバムでしか聴いたことがないのですが、真っ先に思い浮かべたのが70年代キング・クリムゾンでした。70年代のクリムゾンがステージでしばしば試みたフリー・インプロヴィゼーションの雰囲気にとても似ているのです。キーボードの音色はしばしばメロトロンを思わせる場面があるし、何よりも本作で初めてエレキ・ギターを弾いたというヘルゲ・ステンによる、蛇がうねっていくかのような演奏がかなりロバート・フリップを連想させます。そして何よりも全体に漲る、どんな静寂の時でも一瞬も緩むことのない緊張感こそが最大の共通点といえるでしょう。
もちろんスーパーサイレントはキング・クリムゾンの猿真似グループではなく、彼等ならではの音楽を鳴らしているグループです。しかし、こんなところで今のクリムゾンにはない(決して今のクリムゾンを否定しているわけではありませんが・・・)味わいとスリルがある音楽を聴くことができるとは思いませんでした。ロック・ファンにも充分にアピールする力を持ったアルバムだと思います。