高木綾子 meets 福田進一「海へ」

海へ

海へ

フルート奏者高木綾子とクラシック・ギタリスト福田進一のデュオ・アルバム。なのにジャケットに高木綾子の写真しかないのはどういうわけだ(笑)。なんだか妙に不健康そうで彼女の魅力を引き出しているわけでもないし。元々はオーケストラとの録音だったはずが、アレンジャーの急病により予定変更。録音までわずか2週間という短い準備期間しかとれなかったため、ヴィジュアルにまで手間がかけられなかったのでしょうか。高木綾子ってもっとチャーミングな方ですよ。
・・・ジャケットはともかく、内容的にはアルゼンチン、フランスの作品を中心としたプログラムになっていてリラックスして楽しめます。アルゼンチンものでは福田進一の伴奏が冴えるピアソラ「タンゴの歴史」もさることながら、伸びやかでかすかに哀愁をはらんだメロディーのプホール「ブエノス・アイレスの雲」がうれしい発見。フランスものではイベールの精妙優雅さが印象に残りました。
アルバム・タイトルになっている「海へ」は武満徹の名曲。録音も多く残されていて、これを含めると私ですらこの曲を収録されたアルバムを5,6枚持っています。「Ⅰ夜」「Ⅱ白鯨」「Ⅲ鱈岬」の3つの小曲から成り、E♭(=ドイツ音名Es=S)、E、Aの3音つまり「SEA」をモチーフとしてつくられている曲です。ここでの2人の演奏は輪郭のはっきりした、初めてこの曲を耳にする人にもわかりやすいものになっているように思います。
他にはラヴェルやボザなどの曲を収録。最後に置かれたボーリング曲「アイルランドの女」は、ギターの軽やかな伴奏に「グリーンスリーヴス」を思わせるメロディーが歌われる曲で、洒落た印象を残してアルバムを締めくくっています。