HAT「DSP HOLIDAY」
- アーティスト: ハット,細野晴臣,アトム・ハート
- 出版社/メーカー: 不明
- 発売日: 1998/06/21
- メディア: CD
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1st発表時の細野は遊佐未森、甲田益也子、小川美潮をヴォーカルに起用したアルバム「LOVE, PEACE & TRANCE」、アンビエント・ハウス色の濃いアルバム「N.D.E」、エスノ・アンビエントなアルバム「ナーガ」を発表と多作ではあったもののまだアンビエントにどっぷりと浸っていた印象があります。
翌年発表されたビル・ラズウェルとのコラボレーション・アルバム「インターピーシス・オーガニゼイション」まではその傾向が続いていましたが、コシミハルとのユニット「スイング・スロー」辺りから徐々にポップ回帰が始まります。HATの2ndは時期的にはスイング・スローと以前取り上げた森高千里「今年の夏はモアベター」の中間に位置するアルバムで、この間の細野の変化が作風にも反映されているように思えます。1stでは比較的抽象的なアンビエント・ハウスのユニットだったのが、このアルバムではジャケットにも表れているように、モンドで怪しげなトロピカル・テクノになりました。曲名も「Arizona Analyzer」「Shinjyuku Photoshop」「Plug-in mambo」「Granular Sunset」「Digidelic」「Uptown Pulldown」「Malihihi Mete」とエキゾ感に富んでいます。
収められた7曲全てが3人の共作名義になっていますが、基本的にアトム・ハートとテツ井上がプログラミングを担当し、そこに細野がアコースティック楽器を重ねるといったつくり方がなされているようです。「Arizona Analyzer」は10分以上に亘る大曲でメキシカン・タッチのギターとベースのリフが印象的。「Shinjyuku Photoshop」では
その後も1stとはうってかわって親しみやすい曲が続きます。変則ビートの「Digidelic」が個人的には好きですね。最後の「Malihihi Mete」はハワイ民謡のカヴァー。波の音やウクレレがリゾート気分を醸し出します。
90年代後半の細野の活動はどことなく地味だったように思っていたのですが、改めて聴きかえすと、どのアルバムもしっかりと聴かせどころをもった作品になっているのに感心します。中でも本作は70年代の細野ソロにも通じる雰囲気があり、この時期の細野が苦手な人でも楽しめるのではないでしょうか。YMOが「シムーン」や「アブソリュートリー・エゴ・ダンス」の路線を発展させたらこうなったかも、と思わせるところもありました。