森高千里「今年の夏はモアベター」

今年の夏はモア・ベター

今年の夏はモア・ベター

かの「渡良瀬橋」を収録したアルバム「ラッキー7」でいきなり「この次はモアベターよ!」が飛び出してからいつかはあるかも、と思っていた細野晴臣森高千里の組み合わせが実現した一枚。当時はローソンのCMでも夫婦役を演じていたのもなつかしいですね。アンビエント路線から徐々にポップ・ミュージックへ回帰しつつあったこの頃の細野ですが、このアルバムではYMOを通り越して一気にトロピカル3部作時代までいっちゃっています。ブックレットの写真なんて「ハリー細野」を彷彿とさせるもの。森高もこのアルバムではアジアン・ビューティー的なヴィジュアルできめていて、いい感じです。
全9曲と収録曲数は少ないのですが、かつての細野の名曲「東京ラッシュ」と「風来坊」をデュエットしたりと大半の曲を細野が手がけています。全体的にはいい具合に肩の力が抜けている印象。森高のお腹に力が入っていない歌唱がお気楽気分を醸し出し、細野も犬の声を演じていたりと妙にご機嫌なのがアヤシイ。とはいえサウンドはさすがの仕上がりで派手さはないけどじっくり聴いていると細部の面白さに気づかされます。森高のドラムを封印したのは細野のこだわりか。その代わり「カリプソの娘」ではスティール・ドラムをたたいてますよ。森高にとっても、細野にとっても最高傑作とはいえないけれど、なぜかクセになって、毎年暑くなると引っ張り出して聴いています。