OKI「TONKORI」(asin:B0009OAW2I)

アイヌの伝統楽器「トンコリ」を独学で習得したＯＫＩによる、初の全編トンコリ・ソロによるアルバム。かつての名人たちが残した名曲・名演を再現する試みということです。私はトンコリの実物を見たこともなく、実際の演奏を聴いたこともないのですが、写真で見る限り板に弦を張っただけの素朴な楽器のように思えます。しかし、このアルバムから流れてくるのは、シンプルでありながら奥深さと豊かさを湛えた音楽なのでした。
一定のリズムが波のように繰り返されながら形作られていく曲が大半を占めますが、アイヌの音楽に疎い私の耳には、時にスティーヴ・ライヒ、時にアフリカのンビーラ、あるいは中近東のウードのように、そしてそれら全てがあわさったかのように響いてきます。素朴な息づかいと、洗練された音楽性が自然に同居していることに驚かされると共に、大きな魅力を感じるのです。弦を弾く指の動き、弦のふるえが伝わってくるかのような音の良さも触れておくべきでしょう。このアルバムは単に歴史的遺産を保存しているだけではありません、この音楽には確かに現在の風が流れています。聴いた方なら納得してくれるのでは？