ナショナル・ヘルス「ナショナル・ヘルス」

ナショナル・ヘルス(紙)

ナショナル・ヘルス(紙)

78年作。カンタベリーのスーパー・バンドになるはずだったのが、時代の逆風で短命に終わってしまった不幸なバンドです。とはいえ残された作品はどれも素晴らしいもの。中でもこの1stは、10分以上の大曲が4つという構成にもかかわらず、メロディーがはっきりして親しみやすい1枚です。
正式なメンバーはこの時点でデイヴ・スチュワート(key)、フィル・ミラー(g)、ニール・マレイ(b)、ピプ・パイル(ds)だけになっていましたが、アルバムのクレジットに目を通すとわかるように、アラン・ゴーウェン(key)とアマンダ・パーソンズ(vo)が大きな役割を果たしています。この2人は元々メンバーだったものの、アルバム発表時点では脱退していたのでした。この6人は、ハード・ロック・シーンで主に活躍していたニール・マレイを除けばいずれもカンタベリー・シーンを担ってきた面々。これらの優れたミュージシャン達が集って生み出した、高度でありながら不思議に人なつっこい感触の音楽がこのアルバムではたっぷりと味わえます。
冒頭の「Tenemos Roads」に彼らの魅力は端的に表れていて、デイヴ・スチュワートのキーボードが思う存分に活躍した後、天から舞い降りるようにアマンダ・パーソンズのソプラノ・ヴォイスが現れる瞬間は何度聴いてもドキッとさせる素晴らしいもの。全体を通してこのアマンダのヴォーカルやスキャットがアルバムにポップさを与えていて、このアルバムを親しみやすいものにしています。ハット・フィールド&ザ・ノースの「ザ・ロッターズ・クラブ」と並ぶカンタベリー最高の達成にして最良の入門アルバムといえるのではないでしょうか。

で、なんと