カエターノ・ヴェローゾ東京公演@東京国際フォーラム

行ってきました、カエターノ・ヴェローゾ。ただ、ただ、すごかったとしかいいようがありません。弾き語りで始まるオープニングからひたすらカエターノに唸らされ、酔いしれっぱなしでした。私の左隣に座っていた方は途中から1曲終わるごとに「やべーよ」を連発してましたが、さもありなん。ヴォーカルのダイナミック・レンジが予想以上に大きいのにも驚かされましたが、あの甘い声質はどんな時でも芳醇さを保ち、乱れることはありません。大半の曲を椅子に座ってギターをつまびきながら歌っていたのですが、時折立ち上がって見せる演劇的なパフォーマンスが効果的なアクセントに。カエターノの一挙手一動足に会場全体が魔法にかけられたようでした。
音楽監督であるチェロのジャキス・モレレンバウムを中心としたバンドもカエターノをしっかりとサポート。ジャキスの程よく抑制されたソロの気品のある美しさもさることながら、高速カッティングで会場を沸かせたギター、洗練されたジェイミー・ミューアと呼びたい多彩なパフォーマンスを披露したパーカッショニスト(曲中で叩き出す度に、こんなところで入ってくるのか、しかもこんな刻みであうのかと一瞬思わせるのですが、絶妙にハマッていて驚きの連続でした)など聴きどころは盛りだくさん。アレンジも千変万化で、時にチェロとのデュエット(ものすごいアヴァンギャルドなバッキングに聴こえました。よくあれで歌えるなと感心)、時にベースとパーカションだけを従えたりと様々な組み合わせで楽しませてくれました。勿論カエターノ自身のギターによる弾き語りもふんだんに聴かれ、全く目をはなすことができませんでした。
初期の名曲から最新作に至るまで幅広く取り上げられた選曲も申し分無し。個人的に好きな曲が続いた中盤は眩暈がしそうでした。ハードなレゲエに生まれ変わった本編のラスト・ナンバー「エストランジェイロ」を終えると、会場は総立ちで拍手の嵐。そしてアンコールは4曲。最後の最後は名曲中の名曲「Terra」。サビの部分ではカエターノが客席に「歌って」とアピール。もちろん歌いましたとも(発音はテキトーでしたが)。

Terra, Terra
Por Mais Distante O Errante Navegante
Quem Jamais Te Esqueceria

(地球 地球よ
おまえがどれほど遠い存在であれ
どれほど過ち多き旅人であれ
おまえを忘れることは決してないだろう)


客層は老若男女入り混じっていましたが(ピーター・バラカンも来ていたと思います)、終演後は誰もがためいき交じりに「すごかったね」とつぶやいていました。音楽が好きでよかったと心から思える最高の一夜でした。