ザバダック「桜」

桜

春の日は春の歌 雨上がりは虹色
五つ渡り終えたら 国境の草原
(「五つの橋」より 作詞:工藤順子 作曲:上野洋子

上野洋子在籍時最後のアルバム。この後ザバダック吉良知彦のソロ・ユニットとして活動を継続しているのですが、私が興味あるのは上野洋子だったので聴いていません。とはいえこのアルバムで吉良がヴォーカルを取る曲は、これまでと比べて骨太になり、スケールが大きくなっていて決してきらいではないのですけどね。でもやっぱり上野洋子の透明感のある声と、ケルト〜東ヨーロッパ色が濃い曲づくりに惹かれるのです。
1曲目の「五つの橋」がいきなり上野色全開の快作で、歯切れ良いワルツのリズムに乗せてブズーキ、マンドリンアコーディオンといった楽器が絡んでいきます。これは文句なしの名曲。「五つの橋」以外にもこのアルバムには「Psi-trailing」「Tin Waltz」といった三拍子系の曲が多く収められているのが個人的にはうれしいところ。いつかポップ・ミュージックのワルツ・ナンバーばかり集めたセレクトをつくってみたいですね。
他にも日本民謡に挑んだ「椎葉の季節」や意欲的なインスト・ナンバーのタイトル曲「桜」など力のこもった作品がならんでいます。「アジアの花」なんて題名の曲もあって、この時期の彼らがヨーロッパだけではなく、日本からアジアも視野に入れた越境的な音楽をつくりだそうという意気込みが伝わってきますね。突然思ったのですが、このアルバムはいわばザバダック版「泰安洋行」といえるかも。ただしこちらはハリーと比べるとかなり生真面目なのですが。


(追記)お、タイミングよくこんなニュースが