夏木マリ「戦争は終わった」

戦争は終わった

戦争は終わった

考え込んだり
沈んだり
ぶらりと旅に出てみたり
とつぜん椅子から立ち上がり
独りでダンスを踊ったり
頭の中で
朝から
セロニアス・モンクが鳴り響く


(「セロニアス・モンク」より引用。作詞:小西康陽

前作「パロール」と同様、小西康陽がプロデュースを手がけた新作。この2人の相性は変わらず素晴らしく、以前からのファンの期待を裏切ることはありません。夏木マリという表現者を得て、小西のストーリーテラーとしての才覚が冴えまくっている印象を与えます。婀娜っぽさとシニカルさが表裏一体をなしている夏木マリのヴォーカルと短編小説のような小西の歌詞が、単純な味わいではなく甘味と苦味が複雑な層をなす歌世界をつくりあげ、ひとつの雰囲気を保ちつつ、細かなニュアンスを楽しむ悦びをも与えてくれるます。こんな音楽ありそうでいてなかなか見つからない。
ピチカート時代の楽曲「戦争は終わった」や武満徹作曲「死んだ男の残したものは」が聴けるのもファンとしてはうれしいところで、特に後者のジャジーな解釈は、これまでの同曲の演奏の中でも飛びぬけた出来栄えと思います。