白井良明「City Of Love」

City Of Love

City Of Love

今日は白井“ギター・ルフテヒャー・パンサー”良明の誕生日。眼福さん(id:momongah)さんの日記では約2週間に亘って「白井さんSP」が展開されていましたので、ぜひそちらもご覧ください。
さて、人間や動物*1相手に八面六臂の活躍を繰り広げている白井良明ですが、意外にもソロ・アルバムは少なく、個人名義のフル・アルバムはこれと「カオスでいこう!」の2枚しかありません。コテコテした派手な音を聴かせる「カオスでいこう!」も楽しいアルバムなんですが、私が好きなのはこの1stの方です。彼の実験・冒険精神とソングライターの資質がうまく折り合った佳品だと思います。
ムーンライダーズの中でも突き抜けた、明るいPOPさを持つ彼の持ち味は表題曲の「City Of Love」やラテン風味の「火傷しそう!君の冷たさに」に表れていますし、「青空のマリー」や「静岡」に通じるフォーク・ロック・テイストも「青空のトランペット」や「君の瞳の湖」で聴くことができます。これだけでも彼のファンなら充分満足のいくものですが、やはり特筆すべきは87年の時点でいちはやくハウスへの接近を見せた2曲「ウイスパー・イン・ザ・ナイト」と「スリーピング・バッグ」でしょう。ここでの成果が後にライダーズ本体のアルバム「最後の晩餐」に引き継がれていくのですが、結果的に「ハウスをダシにした」はねるビートでビートルズサウンドへ接近したものとなった「最後の晩餐」に対して、こちらの方がずっとハウス的なサウンドとなっています。なかでも「ウイスパー・イン・ザ・ナイト」における4つ打ちのビートとアコースティック・ギターの絡みあいは今聴いてもとてもスリリング。良明の代表曲のひとつとしてもいいでしょう。このようにヴァラエティに富んだ優れたポップ・アルバムなのですが、惜しむらくはヴォーカルがやや弱く感じること。そこがまたいい、と一ファンとしては思ってしまうことも確かなのですが。

*1:かつて動物相手にギターを聴かせるという企画をやっていた