アンドレ・ジョリヴェ「エラート録音集成」

ジョリヴェ:エラート録音集成

ジョリヴェ:エラート録音集成

同時代の大物メシアンの影にかくれて、あまり知名度のないフランスの現代音楽作曲家アンドレ・ジョリヴェ。けれども「のだめカンタービレ」の読者なら聞き覚えのある名前なのでは。そう、単行本第6巻の卒業演奏会のエピソードで「打楽器の女王」真澄ちゃんが千秋を急遽伴奏の助っ人にして演奏した曲がジョリヴェ作品「打楽器のための協奏曲」でした。残念ながらその曲をCDで入手するのは現在では困難らしいのですが、このエピソードをきっかけにジョリヴェに興味を持った人にはうってつけといえる作品集が発売になりました。


ライナーノートを手がかりに、ざっとジョリヴェについて触れておくと、1905年、パリにて誕生。音楽を学ぶかたわらキュビズムの画家、ジョルジュ・ヴァルミエにも師事していたそうですが、作曲活動に決定的な影響を与えたのはエドガー・ヴァレーズでした。打楽器の多用、太古の神話と異国文化への傾倒という点で両者の間には強い親近性が見られます。このディスクにはそんなジョリヴェの個性がくっきりと刻まれています。


ディスクは4枚組で、演奏者はジョリヴェ自身の指揮をはじめパリの精鋭が集ったもの。フルートではジャン・ピエール=ランパルも参加しています。パーカッションに注目してみると、「チェロ協奏曲第1番」(disk1)でもその独特な使用方がうかがえますが、特に引き込まれるのが演奏者の名人芸が遺憾なく発揮されている、ダイナミックな「トランペットと打楽器のためのエプタード」(disk2)。disk3に収められた「フルートと打楽器のための協奏的組曲」も聴き応えがあります。リズムの面白さという点では「5つの儀式的な舞踏」(disk4)もなかなかのもの。また、電子楽器オンド・マルトノを使用した「オンド・マルトノ協奏曲」(disk2)が聴けるのもこの作品集の大きなポイント。歴史的にみても価値があるのはもちろんですが、現代音楽の愛好家や「のだめ」ファンならずとも、例えばストラヴィンスキーの初期バレエ作品3部作や、あるいはフランク・ザッパを好きな方などにも十分アピールすることができる魅力的な作品集となっています。