ダンカン・ブラウン「ギヴ・ミー・テイク・ユー」

ギヴ・ミー・テイク・ユー+2

ギヴ・ミー・テイク・ユー+2

ワールド・スタンダードこと、鈴木惣一朗の著書「モンドくん日記」ではこのアルバムのことを次のように紹介しています。


(ドノヴァンのアシッド・フォーク)+(ブライアン・ウィルソンのペット・サウンズ)÷(ニック・ドレイク)=ダンカン・ブラウン


いくらなんでも大げさなんじゃないか、といぶかしげになる方もいらしゃると思うのですが、これがなんと本当なんです。いや、実はあれだけじゃまだ足りない。個人的には『一年間』の頃のコリン・ブランストーンや、XTCのコリン・ムールディングも上の式に加えて欲しい。英国のSSWによる多くの名作の中でもひときわ繊細な美しさをもち、芳醇さを湛えた果実がダンカン・ブラウンの1stなのです。


68年にイミディエイト・レーベルから発売された本作は、レーベル創始者のアンドリュー・ルーグ・オールダムがプロデュースにあたり、アレンジはダンカン自身によって制作されたものです。繊細なメロディ・ライン。憂いを帯びたダンカンのヴォーカル、端正なガット・ギターを中心に据えたクラシカルなアレンジ、気品のあるジャケット、どこをとっても非の打ち所のない素晴らしい完成度だったのですが、当時のイミディエイトは経営が苦しくなっていた時期であり、アルバムのプロモーションはほとんどなされないまま潰れてしまったため、ほとんど話題になることなく終わってしまいました。


この後、ダンカンはミッキー・モストのプロデュースによる2ndアルバムを制作。ややロック色が強くなりましたが、やはり好盤です。76年にはモダン・ポップ・ユニットのメトロを結成。これでダンカンを知ったという方も多いかもしれません。ただこの路線はちょっと無理があった。ベスト盤も最近出たけれど、やはりまずはこの1stに接して欲しいところです。きっと一生ものになりますよ!